陶芸家 佐々木忍
小粋なモチーフが利いた、ユニークな磁器 陶芸家 佐々木忍
手彫りの磁器でユーモア溢れるモチーフを繊細に表現する佐々木忍さん。美大を卒業し、その後結婚・出産と休むことなく陶芸家として作陶続けられています。
イベント前の忙しいお時間を頂戴し、東京近郊にある自宅兼工房へお邪魔してきました。
火消しの様子が彫られている型を使用したカップ(写真右・試作中)でお茶をいただきながらお話を伺いました。
– アイデアはどこから生まれてきますか? –
「もともと小さくて細かいものが好き、骨董も好き。その話を友人にすると、この本面白いよと薦められた鬼平犯科帳にはまったり・・わりと人から薦められて試しに読んでみたり、やってみるとうまくいくことが多いんです。
あと、根付を見たとき衝撃が忘れられない。あの小さなものの中に洒落を交えた細工の細かさ、その時代に身に着けている様子を想像するのが楽しい。
写真のない江戸のイラストを見ながら平面を実際に立体に起こす作業はとても面白いです。」
「実際作るときは自分の欲しいものを作ってみます。これが作りたかったんじゃないなぁと考えながらうまくいかないときはとにかく作って作って。あれこれ失敗して完成に近づけていきます。」
– お子様が生まれてからの作品作りに変化はありましたか? –
「製作できる時間がなくて蕁麻疹が出てしまったことがありました。
原因はストレス。そんな時、作陶を少しずつ進められると不思議。蕁麻疹が良くなり治ってしまいました。」
時間を見つけては製作をつづけ、現在まで休むことなく作陶続けられています。
– まだ小さなお子様との生活の中で、いつ作陶されているんですか? –
「子供がお昼寝をはじめたら作業、という風に途中で起きたら乾燥しないようにタッパーに入れてやっている。30分でも毎日こつこつ続けている。同じことをやるのが好きなんです。 実は出産後退院して翌日から作陶していました。
最近は『お母さんの作る○○凄いね。可愛いね。』と褒めてくれたり。一緒に作るのを楽しむこともあります。」
– 今後、挑戦したいことはありますか? –
「今興味があるのは、子供用の食器で、昔の貨物列車などの電車柄も取り入れたり、動物以外のものも挑戦したい。」
「今までは男性っぽいものを作ってきたけれど、今は女性だからできる可愛らしいものにも挑戦していきたい。」
とイメージを膨らませていらっしゃいました。
2人の娘さんが小学生・幼稚園に入られて、製作できる時間が増え新しい型製作を始められた佐々木さん。
「今ままでのような1点もののだけではなく、大量生産で見ていただける作品も作っていきたい。釉薬も新しい色にも挑戦しています。」
– お客様に伝えたい内容ありますか? –
「細かな部分もきちんとついているので、普段どおりに洗っていただいて大丈夫です。」
人形や動物の型がたくさん、これは一部。ひとつひとつ細やかな表現の中に面白みが感じられるのは佐々木さんならでは。
富士皿ができるまで
佐々木さんは磁器の土を消しゴムくらいのかたさにして削っていきます。硬くして削る方もいるそうですが時間が何倍もかかってしまうので柔らかいもので削られるそうです。磁器は2割近く縮むので変形しやすく出来上がりを統一することが難しいです。
01 富士皿、箸置きのガイド
こちらを使って磁器の土を
カッターで削っていきます。
02 たたら
切糸で木の厚みにスライスして
1~2日乾燥させます。
03 削りだし①
ガイドを磁器にのせて
カッターや道具を使って
削りだししていきます。
04 削りだし②
お皿の平らな面も手作業で
削ります。硬くなる前に
10分くらいで手早く削って
いきます。集中力と技術が
必要な場面。
05 乾燥
富士皿の荒削りを終え、
乾燥。反り止めに重しを
載せます。
06 完成
仕上げをし釉薬を掛け、
窯入り。金彩やロゴを施して
完成となります。
実際細かいお話を聞かせていただくと、作らないと蕁麻疹が出るといった経験も。黙々と製作し極めていくことが好き、根っからの職人気質でありながらデザインや商品のストーリーもユニーク。たぐいまれな才能をお持ちの佐々木さんの今後が益々楽しみな取材となりました。
WISE・WISE tools 上田