木地師 高田晴之
輪島の木地職人 高田晴之
高田さんが工房を構えるのは日本を代表する漆器の産地、石川県の輪島市。
漆器製作は大抵が分業化されていて、大きくは器のベースをつくる「木地師」とその器に漆を塗る「塗師」、器に加飾する「沈金」「蒔絵」などに分かれます。
高田さんは椀木地師。武蔵野美術大学を卒業後、輪島漆芸研修所で漆器製作を学び、椀木地職人に弟子入り。その後4年の修行を経て独立しました。
使いやすさと美しさを兼ね備えた形を追及したお椀
椀木地業の傍ら、木を削り、漆を塗る、一貫制作による漆器作りにも取り組んでいる高田さん。
その作品は木地師ならではの視点に溢れています。
代名詞とも言える銀杏(いちょう)のシリーズ。
銀杏の木は柔らかく、漆器に使われることは少ない素材。反面、その柔らかさゆえに漆を良く吸い込みます。
高田さんはその特徴を活かし、木目がうっすら見える「拭きうるし」で仕上げ、銀杏の美しい表情を生かしました。
素材がそのまま表に現れるデザインなので、木地の精度の高さも試されます。
更に、表面に細かな千筋(せんすじ)を施し、柔らかく傷つきやすい銀杏の表面を保護しながら、趣ある質感に仕上げています。
工房内に所狭しと積まれた「荒型」(器の種類別に切り出した木地)。良く寝かせることで狂いが少なく、硬い部分と柔らかい部分が馴染んで、削りやすい材に。
細かな千筋(せんすじ)は、一筆書きのように一気に挽きあげます。
刃の切れ味が器の仕上がりを左右するので、切れ味を保つことも大切な仕事。
高台の形状や口当たりなど、使いやすさを追求したフォルム。
銀杏高台椀(いちょうこうだいわん)ができるまで
そうして出来上がった作品には、うつわ作りに対する高田さんの真摯な姿が映し出されています。
器のサイズに合わせ切り出した荒型を、轆轤(ろくろ)挽きしていきます。
お椀の外側から。年輪による木地の硬軟に合わせてカンナを動かしていきます。
ゲージを当てて仕上がりの形を確認しながら、削り進めます。
お椀の内側も同様に、表面を整えながら。
弟子入りした親方の親方が山中の出身だったため、高田さんの轆轤は山中式。
木地の風合いを活かす、拭きうるし仕上げ。
沢沿いの道の途中にある、高田さんの工房。ところ狭しと木地材料の荒型が積まれたほんのり薄暗い工房の中、
電球のライトに照らされて黙々と轆轤を挽くその姿は、まるでおとぎ話の光景のよう。高台椀や筒椀など、
高田さんとワイス・ワイスとのやり取りの中で生まれた商品の製作のコツや難度の高いポイントなどを改めて伺い、
関心しきりでした。
Woodwork artist・Haruyuki Takata
木地師 高田晴之
1968年 広島県出身
武蔵野美術大学卒業後、輪島漆芸研修所で漆器製作を学ぶ。その後、椀木地職人に弟子入りし、4年の修行を経て独立。
2001年 高岡クラフト展にて奨励賞受賞
2011年 清州国際工芸公募展 銀賞、高岡クラフトコンペ優秀賞受賞