matsurica ガラス作家
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柔らかな光が美しい、ガラスのアクセサリー
砂糖菓子のようなふんわりと柔らかで優しい光が特徴的なmatsuricaさんのピアスやネックレス。WISE・WISE tools店頭でも、特に30代の女性に人気があり、どのように作られているのかというご質問もよくいただきます。
今回の取材ではmatsuricaの作り手、古川莉恵さんのアトリエ兼ショップに伺い、製作工程や、古川さんがアクセサリー作りに至るまでの道のりなどを教えていただきました。
国立駅からまっすぐ歩いて10分程で着くアトリエは、窓が大きく光がたくさん入る、素敵な空間。音楽のかかるリラックスした雰囲気の中、お話を聞かせていただきました。
優しい光の秘密
いつも気になっていたmatsuricaアクセサリーの構造。どのようにして、この淡く優しい光を生み出しているのか、お聞きしました。
主な素材はガラス。電気炉で焼いて丸みを帯びたガラスの底面に、顔料等を使って着彩しています。そこにぼかしを入れて、美しく混ざり合う淡い色みを表現。
そして、その下に鏡を仕込むことで、光の反射を利用して、色に変化を生み出しています。ガラス底面に付いた色が、下の鏡に反射してガラスの内部にふわっと広がります。
また、仕上げにガラスの表面に削りを入れることで、柔らかな表情を付けています。
さらに、鏡の下にはコーティングのためのガラスが。上下のガラスで鏡を挟み込むような構造になっています。
この3層によって、matsuricaさん独特の表情豊かな光が生まれているのです。
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製作の様子を見せていただきました
matsuricaの技法が生まれたきっかけ
お話を聞いていくと、以前は今のアクセサリーとは全く違った作品を作られていたとのこと。これまでの道のりをお聞きする中で、鏡を仕込むアイディアが生まれたきかっけも伺いました。
美術大学のガラス科で学び、吹きガラスを専攻した古川さんは、卒業してからも美術講師として働きながら、時間を見つけて吹きガラスの製作を続けていました。(学校の先生でいらしたからか、製作工程の説明もとってもわかりやすかったです!)
しかし、吹きガラスの製作は二人一組で行うため一人で続けていくのが難しいという悩みが。それでもご自分が今まで学んだガラス製作の技術を生かしてできるものをという思いから、現在の製作スタイルになっていきました。
以前作っていたもの(下の写真のおうちなど)は、今の作品とは少し違った雰囲気。同じ作家さんでも、時間と様々な経験を経て、作品や製作スタイルが変化・洗練されていくのを感じました。
最初にこの技法で作ったのは、なんと画鋲だったのだそう。画鋲を作ろうとあれこれ試す中で、ガラスと画鋲のピンの接着面を隠す方法はないかと考えていたところ、ふと鏡を付けてみたら、キラキラして綺麗な理想の光が生まれたのです。
その画鋲もアトリエに飾られていました!これまでの作品と共に、今のmatsuricaアクセサリーを見守っているかのようです。
キルンキャスト(*)という技法を使った作品。可愛らしい雰囲気のおうちがアトリエの窓辺に飾られていました。
初めて鏡を仕込んだ作品がこちら。ここから現在のmatsuricaアクセサリーが生まれました。
ガラス板が入ったケースは、小学校の「牛乳瓶入れ」。かわいらしいアイテムがたくさんあるアトリエでした。
アトリエは、金工作家のお友達と一緒に運営されており、お二人の作品がコラボレーションしたアイテムも。(箱がmatsuricaさんの作品です)
*キルンキャスト・・・キルン(電気炉)使って制作するガラスの装飾加工法の一つ。粘土やワックスで作った原型を耐火石膏等で型取りし、そこへガラスを流し込む鋳造技法。
matsuricaのアクセサリーができるまで
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01 ガラスをカットする
板状のガラスを専用カッターで
細かく切っていきます。
古川さん曰く、
「ガラスに傷をつけるような感じ」。
切れ目が入ったらパキッと
手で割ります。
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
02 電気炉でガラスを焼く
作品の大きさによって、
切ったガラスを重ねて焼きます。
焼くと、ガラスは
表面張力によって写真のような
丸みを帯びた形に。
(上が焼く前、
下が焼いた後の状態)
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03 平面出し&荒らし
こちらの機械を使って、
色付けする部分を平らに削り、
表面を荒らします。
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04 色付け
ガラスの底に顔料を使って着彩し、
ぼかしを入れることで
美しい色の組み合わせが
生まれます。
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05 鏡を貼り付ける
切り出した鏡を、
フォトボンドで貼り付けて、
ブラックライトを当てて
硬化させます。鏡の下には、
コーティングのための
ガラスをもう一枚
貼り付けています。
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06 形を整える
機械を使って、形を綺麗に
整えて仕上げをして
いきます。
また、表面に削りを
入れることで、光に
表情を生み出しています。
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今までどのように作られているのか言葉で聞いただけではわかりにくかったのですが、製作工程を実際に見て、ひとつひとつこんなにも手間をかけて作られているのかと驚きがありました。
使用している道具やディスプレイされている小物もどれも魅力的で、古川さんの明るい人柄が伝わってくるような居心地のいい工房でした。
WISE・WISE tools 山田
Glass artist / matsurica・Rie Furukawa
matsurica 古川莉恵さん(ガラス作家)
東京生まれ。
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科ガラスコース卒業。
2012年「matsurica」としてアクセサリー、小物の制作を開始
「ガラスに包み込まれるヒカリを大切に制作しています。小さなガラスの中に空間やヒカリの変化を感じて頂けたらと思います。」
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