木工作家 うだ まさし
遊び心あふれる、個性豊かな木の道具たち
木のカトラリーやお皿、カッティングボードなど、個性あふれる伸び伸びとしたデザインが人気の木工作家うだまさしさんの工房を訪ねました。
埼玉県秩父市。県内で一番面積の広い街でもある秩父市の、中心部から少し離れた皆野町にうださんのギャラリー兼ご自宅があります。秩父鉄道にのんびり揺られながら観光地として人気の高い長瀞を越え、辿り着いたのは皆野町駅。そこは、見渡す限りを山々が囲む自然豊かな場所でした。
木造の古民家を改装されて作られたギャラリー内には、うださんの作品が壁面や棚にバランス良く陳列され、木のぬくもりいっぱいの温かい雰囲気に包まれていました。
ご結婚後お子様を授かったのを機に、当時暮らしていた場所からより良い環境でと空き家を探していたところ、縁があってここ秩父へ移り住みました。
うださんと木工
学生時代に家具デザインに触れ、卒業後はディスプレイデザインや舞台美術を学び家具会社へ。
ある時友人に頼まれローテーブルを製作することに。せっかくだからと、デザインから製作まで全てを一人で手掛け完成させました。そのローテーブルを友人が大変気に入ってくれたことが、うださんの中で大きな刺激となり、「人の手により生まれるもの」への思いが強くなったそう。その時の経験がきっかけで、木工作家の道へ進みました。
ものづくりについて
うださんの作品の特徴である、型にはまらない自由で遊び心にあふれたデザインは、使い手の想像力を膨らませてくれます。
現在の作品のスタイルが固まってきたのはここ数年ほど。それまでは、機能性も兼ね備えつつ自分らしさをどう出すかを長く悩んだそう。
自分にしかないカタチ、それでいて長く使ってもらえるような愛着の湧くカタチを探し続け、今の作風に辿り着きました。
事前に形を決めるのではなく、製作しながら完成させていく。
まずは、頭に浮かんだカタチを木片に鉛筆でさっと書き込みます。最初から納得のいくものが出来る時と、削っていくうちに思ったのと違ったなと思う時がある。そんな時は、さらに削り修正していく。「木は陶芸と違って、あとから修正が出来るのが僕には合っているんです。」とおっしゃるうださん。
木と向き合いながら、まるで対話をするように丁寧に作業を進めていきます。
喜びを感じる瞬間は?という質問に、
「とっておきのものが出来た時に感情が湧き、思い入れが出来るその瞬間が嬉しい。
さらにそれが店頭に並び、真っ先にお客様が購入してくれた時は、そのお客様と通じ合えた気がする」とおっしゃいます。
旅行が趣味で、これまでに様々な国や地域へ行かれたそうなのですが、特に好きなのがアジア。
訪れた先で古い雑貨を買い集めるのが楽しみであり、同時に作品作りへのインスピレーションをたくさん受けるそうです。お子様が生まれてからはなかなか行けていなかったものの、一昨年タイミングが合って、ご家族で韓国旅行へ。
もちろんアンティーク雑貨をいくつか購入されたのですが、中でも一番のお気に入りは糸巻き用の道具。木製の板に細やかな彫刻が施されており、そこに糸を巻きつける為いずれは見えなくなってしまうであろう部分にも丁寧に彫られています。そういった目につきにくい場所にも、ちゃんとデザインがされている、そういうところに惹かれたとのこと。
伝えたいこと
よくお客様からお手入れはどうしたら良いか、使用時の注意点等を聞かれるそう。
そんな時うださんは「そんなに気を張らずにいつも通りに使って欲しい、使っていくうちに欠けたり色が変化するのは自然なことであり、そこを修理したり天然オイルを塗ったりして上手に長く付き合っていって欲しい」と答えます。自然なものだから、ある程度手を掛けてあげることは必要だけれど、ボロボロになってもしっかりケアをしてあげれば、元気に息を吹き返してくれます。そうやって手を掛け育てていくことで、人はより愛着を持ち、ものを大切にする。それは結果的に日々の暮らしをより愉しく豊かなものにしてくれるのだと思います。
おわりに
私たちの質問に終始笑顔で答えてくださったうださん。
とても朗らかで、好奇心にあふれているような印象を受けました。その人柄とユーモアは作品にも表れています。
どれもサイズや形は様々で、個性豊かなものばかり。同じスプーンでも並べてみると、背が高くすらっとした子や少し幅の広い体格のよい子、少し首をかしげている子など、まるで人間の子供たちのように見えてきます。見ているだけでおもわず笑顔になる、愛嬌たっぷりな作品は、うださんにしか作れない唯一無二の作品であり、これからも多くの方に愛され続けていくのだと思いました。
うだまさしさんの工房をたずねて
手作りの看板がギャラリー兼ご自宅の入り口まで案内してくれます。
草木が植えられた小道を矢印通りに進んでいくと、素敵なエントランスに辿り着きます。
古民家の面影を残しながらも、お洒落なペンダントライトやアンティークな家具が並んでとても温かみのある雰囲気のギャラリー内。
うださんが作ったお盆とカトラリーで頂くお茶菓子は格別でした。
木のぬくもりを感じながらの取材は、終始穏やかな空気が流れる、とても貴重な時間となりました。
人気のカトラリーは程よいサイズ感とデザインで、小さいお子さまから大人まで、多くの人の手によくなじみ、あらゆる場面で活躍してくれます。定期的なお手入れをして大切に使い続けたくなるアイテムです。
旅先で集めたアンティークの道具たち。様々なアンティーク道具との出会いも旅の楽しみの一つであり、作品作りにも大きな刺激となっているそうです。
持ち手を少しだけ長くし、鉄媒染という染色技法で‟ぐるぐる“のデザインを施したサーバースプーンは、WISE・WISE tools限定で制作いただきました。
とても丁寧なものづくりをされるうださん。
日々の暮らしそのものを一つ一つ大切に愉しみながら過ごされていらっしゃるように感じました。
WISE・WISE tools 新井
うだ まさし Uda Masashi
木工作家 / 埼玉 Woodcrafts Artist / Saitama
秩父郡皆野町の古民家に工房兼ギャラリーを構えるうださん。“愛着の持てるカタチ、感情を込めたカタチ”を心掛けるデザインは、個性豊かでありながらどれも手になじみ機能的です。
Masahi is based in his studio with gallery, which is part of a rustic old house, in Minano town, Chichibu county. Distinctive and functional design of his works centers on his concept that their shapes shall make people feel attached to them and be filled with emotion.