ご家族で作り上げる、木肌の表情豊かな温もりあるお雛様
島根県の山間部に生まれた松谷伸吉さんと、妻ちどりさんによる雛人形は、木の肌の味わい、手触りを楽しみながら、年月をかけて深い艶と色合いが増していく作品。
伸吉さんがロクロで形を挽き、ちどりさんが顔や衣装を手で描いて制作されています。
島根県・出雲大社の近くで、親子3人で制作活動
出雲大社の大鳥居をくぐり、松の並木が続く通り沿いにあるのは、ちどりさんがオーナーを務められている「アントワークスギャラリー」。
ご自身の作品の中、ちどりさんが日本を旅して出会った素敵な器たち、作家さんの作品が並んでいます。
娘の清佳さんも、出雲市でご自身の工房兼店舗「じくの店」を構えていらっしゃいます。
お父様もお母様もものづくりをする中で育った清佳さんは、幼い頃から木が身近にあり、自然とご自身も制作したいという思いが湧いたそう。東京で修行をした後は、出雲に戻り、木と向き合いながら、時間をかけ、丁寧に作品を生み出しています。
伸吉さんの工房「山のうえの吉や」
伸吉さんの工房は、出雲大社から海岸沿いへ、日本海の織りなす美しい景勝を眺めながら進みます。
途中で通る「稲佐の浜」は、旧暦の10月、日本の神々が出雲に集まる神在月(かみありづき)に、神々が到着すると言われる場所。
縁結びの神・福の神として古くから人々の信仰を集める場所で、伸吉さんの雛人形は生まれます。
海岸を見下ろす山の上に建つ工房「山のうえの吉や」。
山の上のこの景色と出会い、ここで制作したいという思いで、工房を建てたと言います。
島根県の山間部、雲南市に生まれた松谷さんは、 10代の頃に「こけし」に魅せられ、こけし作家を志して宮城県の工房に弟子入りして技法を学びました。
当時、こけしは旅のお土産として人気のもの。年間にたくさんの量をつくり上げていたと言います。
その後、島根県に帰郷し、こけしで培われた技術を用いて、木から創作する人形を「木地人形(きじにんぎょう)」と名づけて、縁起を願うお雛様や干支の人形をつくり続けています。
工房には、松谷さんのコレクションであるたくさんのこけしが並びます。
それぞれに表情や色彩が違うこけしは見ているだけで楽しく、心を和ませてくれます。
島根の自然の中で暮らしながら、木を扱い、祈りをこめてつくられる雛人形。
「木を素材としたものは、それを手にした人が育てていくもの」と松谷さんは言います。
時間をかけて、木のつやが出て、また違った木の色がでる。木のぬくもりを感じ、
年に一度、雛人形を飾る時にはその再会が嬉しく感じられます。
その中でも、WISE・WISE toolsでお願いしているのは、木肌をそのまま残した雛人形のシリーズ。
「椿」は、皮の部分の茶色が、そのままお雛様の衣装に見立てられたデザイン。
1点1点、茶色部分の形や表情が異なり、自然素材の美しさが引き立つ作品です。
「黒柿」は、樹齢数百年の希少な柿の古木の、白と黒の美しい模様を生かしたデザイン。
模様の出方の個体差が大きく、とてもインパクトのある作品です。
伸吉さんが素材の個性に合わせて、節や割れを避けながら削り出すお内裏様とお雛様。
収まりの良いペアの組み合わせを決め、ちどりさんの手で上品な絵付けが施されます。
年月とともに豊かな表情になっていく、あたたかな木のお雛様。
シンプルで素材の美しさを引き出したデザインは、インテリアにも馴染みます。