願いを乗せて宙を泳ぐ、型染めの鯉のぼり
丈夫で温かな風合いに富んだ和紙を材料に、江戸時代から続く型染めの技法で一つ一つ手作業で染め上げた型染めの鯉のぼり。手軽に飾れるコンパクトなモビールは、風に乗って空中を自由に泳ぎ、住空間に小さな癒しを演出します。
富山県・越中八尾(やつお)和紙の里に残る「桂樹舎」
立山連峰からの雪解け水が流れる、清らかな川の水音が窓外から聞こえる桂樹舎の事務所。
元小学校だったという歴史ある建物と、民藝の気配を感じる家具やオブジェが迎えてくれます。
富山の薬産業の包装紙としてと共に発展し、かつては越中和紙の一大産地であった八尾町ですが、他の和紙産地と同じく西洋紙の登場により衰退してしまいます。
民藝運動を提唱した柳宗悦氏の想いに感銘を受け、八尾和紙産業を次世代へ残すことを決意した「桂樹舎」の創設者・吉田桂介さんは、重要無形文化財・人間国宝の染色家・芹沢銈介(けいすけ)さんとの出会いにより、本来は布に施す型染めの技法を、和紙に施す技術を開発しました。
書くことを目的とした「紙」としての製品にとどまらず、布のように丈夫な、他にない和紙製品を生み出しています。
昔ながらの手漉きで和紙を漉くことから始まる製品づくり。
たくさんの工程を、何人もの職人さんが手分けして担当しています。
続いて、和紙に細かなシワを付けるための「揉み」工程。
1枚1枚、リズムよく揉みこんで、風合いを付けると同時に和紙を丈夫にしていきます。
いよいよ型染めの工程へ。
和紙の「白」色を残したいところへ、糊を塗り付けていきます。
柿渋を塗った型の切り抜かれた部分へ、スッスッと糊を広げます。
型を和紙から取ると、鯉の柄が反転した状態に。糊の茶色は、自然の糠の色です。
糊が乾いたら、1色ずつ手描きで色を入れていきます。
とても根気のいる作業。集中する職人さんの周りに、川の水音が遠くに聞こえる、静かな時間が流れます。
型染め技法に耐えうる強靭な和紙
水に漬けて糊を取り去ると、鮮やかな柄が浮かび上がります。
この工程に耐えられるよう、蒟蒻糊を塗ったり、色止めを施したりして、和紙を強くしてあります。
出来上がった図柄の線は、手作業ならではの揺らぎに温かみを感じる仕上がりに。
型染め技法だから出すことのできる風合いです。
最後に金色で華やかに彩ります。
出来上がった平面の和紙を、鯉のぼりの形に仕立てて、ようやくゴールへ。
手作業のバトンが繋ぐ、温もり溢れる作品となります。
使い込んでいく程にやわらかくなり、艶が出て味わい深くなっていく、型染め和紙の鯉のぼり。
大切なお子様の成長を見守って、お部屋の空間をゆったりと泳ぎます。